にんげん賞味期限

すると、和也がおにぎりの封を剥きながら、ポツリと呟いた。



「今日さぁ、急に犬が道路に飛び出してきて、その犬を助けようとした人が車にひかれちゃってさ…目の前で見ちゃったよ…」



「…大丈夫だったの?」



コトン…



僕は飲みかけのグラスを静かにテーブルに置いた。



「いや、可哀相だけど、ありゃ助かってないだろうな。」



「…犬は?」



「わからない。」



「そっか…せめて犬だけでも助かってるといいんだけど…」



だって犬も死んでしまっていたら助けようとした人が報われないじゃないか…



それじゃあ、あまりにも辛すぎるよ。



そう、この世は報われないことが多すぎるんだよ…
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