君と歩む夢みて~時は平安~
願い
「黄泉様!」
そんな懐かしい声色が聞こえて振り返る。
そこにいるのは…
「天竜…?」
優しく微笑む天竜だった。
「黄泉様!」
あの懐かしい温もりが恋しくなって…
手を伸ばす。
「天、竜…?」
一見、手を伸ばせば直ぐに届きそうなのに。
…届かない。
触れられない。
「な、ぜ…?」
触れられない?
天竜は直ぐ近くにいるのに。
私が近づけば近づくほど…天竜は私から遠ざかる。
「黄泉様…充実されていますか?」
すると、今度は急に切なそうな表情を浮かべた天竜が視界に入った。
それと同時に、天竜が消えていく。
「天竜!どこへ行くのだ?!天竜ッ!」
ーバサッ
勢いよく起きあがると視界に入ったのは、見慣れた部屋。見慣れた布団。
「…夢、か……?」