君と歩む夢みて~時は平安~
住んでいる城とは違って何もない殺風景な部屋。
最後に訪れたときと何も変わっていない。
「…弥栄(ヤエ)」
そう、呟くとうたた寝していた彼女が目をハッと覚ます。
随分と久しぶりに見た彼女は、あの頃と何も変わらず冷めきった心が温まっていく気がした。
「あっ!」
我を見つけると、彼女は嬉しそうに顔を綻ばす。
「来てくれたんですね!」
「あぁ。すまぬな。会いに来れなくて…」
そう、申し訳なさそうに言うと彼女は
「会いに来てくれただけで弥栄は幸せです」
なんて、可愛らしい笑顔とともに言う。
懐かしい彼女の香りが鼻を掠めた。
「弥栄…」
「はい!」
彼女の笑顔がどうしようもなく、愛しい………。