君と歩む夢みて~時は平安~
「はやくお伝えしたかったのですが…なかなか会うことが出来なかったので…」
彼女の言葉から右から左へと受け流される。
突然、身籠もったなどと言われたのだ。驚くのも無理はないだろう。
天皇という最高の位で、農民という…身分の差がありすぎる者をはらませてしまった。
なんて、有り得ない出来事に悩むよりも、幸せという感情が胸を支配する。
「そうか。我と弥栄の子、か…」
彼女のポッコリと膨らんだ腹部を優しく撫でる。
トクントクンと、小さな命を感じた気がした。
でも、やはり身分の差には勝てなくて。
こんな幸せなひとときを今では夢に思う。
あの日の、出来事はきっと一生忘れない。
きっと…トラウマのように我を支配し続けるだろう…。