君と歩む夢みて~時は平安~
…黄泉の誕生日。
子の刻を回った頃、姿を大きい布で覆いながらひっそりと城を抜け出す。
月や星々の光が眩い。久々にゆっくりと月を堪能した。
自然と上がる口角。にやける口元。弥栄と黄泉との幸せなひとときを頭に描きながら、歩く足を徐々に速める。
……徐々に、村が見えてきた。
いつもと違う村の様子。
慌ただしく、泣き叫ぶ者もいる。
「何事だ…」
黄泉と弥栄は無事だろうか…。
近づけば近づくほど、嫌な感じが大きくなる。
何故なら…村の人々が集ってる場所は…
「おい!何事だ!」
愛する…弥栄と黄泉の家だったから。
「退けっ!」
集る人々を、両手で掻き分けながら、家へと歩み進めた。