君と歩む夢みて~時は平安~
髪が風で煽われる。
おそらく、奴が我の横を通ったからだろう。
湧き上がる悲鳴。
ドクンドクンと自分の心臓の音がやけに大きく聞こえた。
一瞬の出来事。瞬きする暇もないとは正にこのこと。
そして…すぐさま振り返る。
「なっ…」
身体に力が入らない。
今、我の目の前で…
何が起きた…?
血に染まる弥栄の着物。
もう、動じない…弥栄の身体。
弥栄の身体を貫いていた物が…ゆっくりと…弥栄から離れる。
「お主…ッ」
理解するのに多少、時間を要した。
冷静でいられる訳がなく、慌ただしい自分の心音。
目の前で起きた現実が…
夢だったら良いのに。