君と歩む夢みて~時は平安~
辺りを見回す。
黄泉も、いない…。
黄泉も弥栄と同じようにか…?
「ハッ…」
憎いという感情しか生まれぬ。
我は汚い人間だ。
「…弥栄…黄泉…
すまぬ…っ」
我が身分を弁えていればこんなことにはならぬかっただろうに…。
「我は…まだまだ未熟で愚か者だな…」
弱音を吐けば…優しく包んでいてくれた人はもう、いない…。
我をわかってくれる人など…大切な者など…もうこの世にいないのだな…。
「おい、お主は城に帰るがよい。」
立ち尽くしている奴に言う。
一礼すると、奴は我の目の前からいなくなった。
…涙さえ、出ぬ…
そんな今、反射的に…ある声が耳に入った。