君と歩む夢みて~時は平安~
「黄泉、顔を上げよ。」
父様の言葉に従うように、顔を上げる。
「お主がそんなに畏まるでない。…そんな我が儘なら我は喜んで聞き入れよう。」
そう口では発していても、父様の顔は少し…歪んでいた。
行かせたくないという思いが滲み出ているよう。
「…明日の正午までには帰ってきます故。」
そんな顔に見て見ぬフリ。
今は…いち早く天竜の元へ行きたい。
「…受け入れよう。」
父様のその言葉を聞いた刹那、私は立ち上がり着物についていた汚れを手で軽く叩いた。
「大変、失礼致しました」
深く…深く、頭を下げ部屋を後にする。
向かうは、天竜の家。
こんな…我が儘にしかない私の勝手な決意に天竜は…どう思うだろうか。
本当に…申し訳ない…。