君と歩む夢みて~時は平安~



「明朝には、黄泉様は他の男のもとへ行ってしまうのだなと、考えた故です」



決心したように口を開いた天竜。



私はその言葉に、何も返せず…ただ俯いた。



「…黄泉様が気に病むようなことではないです。気にしないでください」



髪を優しく梳いていた手が次第に離れていく。



髪に感じていた温もりに、寂しさを感じた。



「天竜…」



震える声を、必死に隠す。



「…なんでしょうか」



「私の、最後の我が儘だ」



君は答えてくれるだろうか。



この、身勝手すぎる願いを。



…他の殿方へ嫁いでしまう。そんな私の願いを。



「今宵は…私を全身全霊で愛してくれ」



こんな…私の我が儘。



< 201 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop