君と歩む夢みて~時は平安~
「……ッ!!」
…走った。
休むことなく。
振り切るように…この頬を滴る涙を。
着物がどれだけ乱れようが構わない。
どれだけ汚れようが気にしない。
一度も…振り返らず。
…走った。
口々に驚きの声が耳に入る。
人にぶつかろうが構わなかった。
…走った。
いち早くこの村から離れたくて。
天竜を感じさせるこの村から…離れたかった。
きっと…もう二度と、訪れることはないだろう。