君と歩む夢みて~時は平安~
「ー…!!」
言葉としては聞き取れなかったが、叫び声とも言える声が耳に入った。
その場にいた誰もがその声がする方向へと顔を向ける。
その罵声は一回限りだったが、気になった私は来た道を一端戻り、その部屋の襖を覗いた。
見えた光景に目を見開く。
まぁ…当然の事なのだろう。
私と同じように、やはり反発を受けてしまうのだろう…
貴族に跪いて頭を下げる天竜と弦がいた。
見てるだけの自分に不甲斐なさを感じ、唇を血が滲むほど噛み締める。
痛みで自分の中の衝動を繋ぎ止めた。
…このまま私が話に割って入れば更に酷い仕打ちを受けるのは目に見えるのだから。
口いっぱいに広がっている鉄の味…痛みが増す唇に更に噛み締める。