君と歩む夢みて~時は平安~



天竜の手はすこし…冷たい。



昔…「手の冷たい人は心が温かいのよ」って誰かが言っていたっけ。



自分の気持ちに従うように手を強く…握った。



「…?黄泉様?」



不思議そうに振り返る天竜。真っ赤な私を見てはますます不思議そうな顔をする。



「私…どこか変ですか?」



自分の身なりを確認しながら私に問うてきた。



私はそれに微笑み返す。そして、手をブンブンと子供みたいに振った。



「黄泉様、最近…笑うようになりましたね?」



クスクスと笑いながら天竜は優しく微笑む。



いきなりあんな優しく微笑みかけるもんだから意表をつかれた。



だけど…素直になれない私は…



「も…、元からだ!」



自分で言うのもなんだけど…なんて、可愛げがない女なんだろう。



そんな、私にまた天竜が微笑みかけるもんだから、私は今日も心臓がうるさい。



こんな日々が続けばいいのに…



なんて、柄にもないことを考えた。



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