君と歩む夢みて~時は平安~
ー…っ!!
一瞬だった。
体に凄い圧迫感を感じる。
「天、竜…?」
私は、今。
天竜の力強い腕のなかにいた。
「黄泉様はずるい…。俺だって…俺だって…!!」
いつもと違う雰囲気に目を見開く。
だが、同時に嬉しく思えた。
天竜が私に…素の姿を見せているから。
「俺は…黄泉様に辛い想いをさせるだけしかできない…っ」
天竜はそう言い、私を優しく離す。
私を正面に向かい合わせると、私の目に溜まっていた涙を拭った。
視界がはっきりしてくる。
はっきりした視界で見えたのは、顔を歪ませる天竜。
「俺は農民で、黄泉様は貴族。それを理由に何度も考えて…やっと封じ込めた。」
…封じ込めた?
「黄泉様への想いを封じ込めた、と思ってたのに…!」
天竜はそう思い詰めた顔をすると再び私を抱きしめた。