君と歩む夢みて~時は平安~



「なにがありがとうなんだよ?」



至近距離に慌てる私に対して、天竜は不思議そうな顔でそんな事を問う。



この距離に対しては、なんとも思っていないようだ。



鈍いというのか…



「て、天竜…」



「なに?」



「ち、近くないか?」



「え?」



……カァッ、そんな音が聞こえそうだった。



天竜の頬は夕焼けなみに染まっている。



月の明かりがちょうど射し込んでいる今。



天竜の顔がハッキリと見えていた。



「よ…っ、黄泉様!早く言って…って!。」



バッと私の頭を横に向ける。



赤く染まっている自分の顔を見られたくないのか、横目で見えた天竜はそっぽを向いていた。



可愛らしいその姿にクスッと笑みが零れる。



「笑った?」



「笑ってなどおらん」



「笑ったよな?」



「笑ってはおらん。」



くだらないやりとりがどうしてこんなに大切に思えるんだろう…。



< 69 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop