君と歩む夢みて~時は平安~
「なにがありがとうなんだよ?」
至近距離に慌てる私に対して、天竜は不思議そうな顔でそんな事を問う。
この距離に対しては、なんとも思っていないようだ。
鈍いというのか…
「て、天竜…」
「なに?」
「ち、近くないか?」
「え?」
……カァッ、そんな音が聞こえそうだった。
天竜の頬は夕焼けなみに染まっている。
月の明かりがちょうど射し込んでいる今。
天竜の顔がハッキリと見えていた。
「よ…っ、黄泉様!早く言って…って!。」
バッと私の頭を横に向ける。
赤く染まっている自分の顔を見られたくないのか、横目で見えた天竜はそっぽを向いていた。
可愛らしいその姿にクスッと笑みが零れる。
「笑った?」
「笑ってなどおらん」
「笑ったよな?」
「笑ってはおらん。」
くだらないやりとりがどうしてこんなに大切に思えるんだろう…。