花が散る頃に去った君
どの道順で、どう歩いたかは分からない。


ただ気付いたら、住宅街をさ迷っていたってこと。




「もしもし…」


虚ろな瞳で映していたのは、真っ黒なコンクリート


雨の音の中、反射的に声の方へ視線を向けた。




赤い傘を、その胸に抱いて、彼女は全身びしょ濡れだった。



虚ろな瞳が、少し見開いた。




「そこの三毛猫さん、傘はいかが?」






彼女はやんわりと笑って、胸に抱いて傘をギュッ握り直した。



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