Sweet〜甘クチ王子様と夏の恋〜
昴君……
その言葉を聞いて私は視線を下に落とした
私への嫌がらせが始まってから昴君と会う事が何度もあった
でも、言えずにいた
「萌音の気持ちも分かるよ…でも、これは大羽君の事好きな人がやってるんだよ!だから大羽君に言わなくちゃ終わらないんじゃない?」
私を諭すように話す杏ちゃんの言葉に目頭が熱くなる
だけど……
「言いたくない…」
声を絞り出すようにそれだけ告げるとまた視線を下に落とす
「何で!!萌音が言えないなら私が話してあげる…」
「イヤッ!!お願いだから止めて!」
杏ちゃんの言葉を遮り、私はギュッと制服を掴んだ
「萌音…」
「だって…知られたくない…彼女が意地悪されてるなんて、しかもあんな酷い言葉…そんな子が彼女だなんてきっと昴君に嫌われる…」
あの白い紙の中の言葉達は
確実に私の心を追い詰めていた
平凡な私がカッコイイ昴君と付き合ってる…
それが間違いなのに
今度は嫌がらせされてるなんて絶対に知られたくない
「お願い、言わないで…」
ポロポロ零れてくる涙を必死に堪えながら
杏ちゃんに頼んだ……