Sweet〜甘クチ王子様と夏の恋〜
二人がスタートしたと同時に
私は隣の杏ちゃんの手をギュッと握り締めていた
昴君……
昴君は足の痛みがないかのように軽やかに走ってる
なんで
痛いはずだよね
その姿を見るだけで瞳から涙が溢れ出す
「萌音…」
杏ちゃんの声も聞こえないくらい私の視線は
青矢先輩じゃなく
昴君に注がれていた
こんな勝負しなくたって本当は分かってた
私の気持ちは
あの日中庭で出会った時から
ずっと貴方だけを見てた
夏の花火があんなに綺麗だったのも貴方と居たからだった
今もそぉ
隣で走る青矢先輩じゃなくて
私の目に映るのは
昴君
貴方一人なの
それなのに
こんな試合をしなきゃ気付かないなんて
私は馬鹿だよね……
「杏ちゃん…私…」
消えてしまいそうな声で言葉にしようとする私に
「何にも言わなくていいよ…顔見ればわかる…」
って優しく手を握り返してくれる