雨の雫
帰りのバスで、僕は彼女に真っ直ぐにこう尋ねた。

「なぁ滝井、これって付き合ってるっていうのかなぁ」

「・・・」
「だめ?」
「それじゃぁ、だめ?」

「えっ?」僕は固まった。

「米君ね、中学のとき私の卒業ノートになんて書いたか覚えてる?」

「えっゴメン。まったく覚えてないや。」
「オレ、なんて書いたっけ?」

「僕に逢いたくなったら、いつでも本屋さんにいますって…」
(確かに書いたかもしれない。しかし、滝井のに書いたかは覚えてないぞ。)

「だから本屋さんに行ってみた」
「でも、一度もいなかったよ。」

「あ~あ、縁がないんだなって思ってたら、あの雨の日に米君に逢ったの。」
「そしたら、また逢いたくなって」
「行動したら、また逢えなくなったの。」
「だから、信じて待つことにしたの。」

「でも、ホント神様っているんだよね。」
「だって、米君と一緒に帰れて、今日もデートまでできちゃったんだもん。」

「で、デート?」

「オレ、神様は判らないけど、天使なら知ってるよ。」

「なに~?天使って。」彼女は目を丸くして笑みを浮かべた。

「ほら、その笑顔…大好きなんだ。」

「え~~?」

「天使の笑顔」

彼女の顔が赤く染まった。

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