雨の雫
そんな折り、バレー部の部員が喫煙で定学になった。
同時にバレー部も一ヶ月の定部に…

僕は意外にも落ち込むこともなく、滝井との二人の時間をイメージしていた。

それを前後して滝井は突然部活を辞めた。

理由は、面白くなく疲れたてバイトもしたいらしい。
僕は逢う時間が減るので反対したのだが、
お金も欲しいし時間は合わせると言われ、半ば強引に決められてしまった。

暇な僕とバイトに忙しい彼女が以前のように毎日逢っていられるわけもなく、
逢えない時間を埋めるため交換日記を始めたが、すれ違いは否めなかった。

毎朝、お互いに書いた一枚のルーズリーフを交換するので毎日でも書けたのだが、
日に日にその回数は少なくなっていった。


初めての夏休み、
さすがに部活三昧のはずもなく暇な日が続いた。

滝井に逢いたい気持ちはあったが、こちらから連絡する事もぜず部屋にこもっていた。



― ジリリリーン ―



電話のベルがけたたましく鳴った。

うたた寝していた僕の頭の中に突き刺さる音だ。
受話器を取ると、
聞こえてきたのは滝井の声だった。

「もしもし、あたし。」
「恵司なにしてたの?」
「今日、バイト無いから暇なの」
「ウチに来ない?」いつもと変わらない声だ。

滝井の家では部屋を持っていたのでウチへ来ることはほとんどなかった。
「今日ウチ誰もいないから来て良いよ」
「ホントー? うん。じゃぁ今から行くね」
電話の向こうで、声のトーンが上がるのがよく分った。

自宅は商店街を挟んですぐのところにあるので、
ものの5分と掛からない。
(急いで片づけしないと…)
慌てて、動いたがなかなか旨くはいかなかった。
兄と共同で使っている部屋は男臭く、散らかっている。
焦っても時間がない…
半ばあきらめかけた時、


― ピンポーーン ―


玄関のベルが鳴った。

彼女が来た。

水色のTシャツにジーンズ、ショートの髪は後ろに束ねて、
ちょっと太めの筆のように可愛くまとまっていた。
袖から見える黄色の折り返しがまた似合っていた。
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