雨の雫
実は滝井の高校と僕の高校は同じ敷地内にある、
いわば双子の学校で単位制のモデル校で、
グラウンドを横切って体育館の裏口から入ればいつでも行ける距離なのだ。

「でも終わる時間が同じじゃ見れないじゃん」冷静に僕が答える
「それもそうだね」彼女がちょっとがっかりした様子だったので
気をつかった僕は、

「いつも同じ時間なら一緒に帰ろうか?」
ノリでついでた言葉だった。

「うん」
彼女が小さな声で頷いた。

(あれ?マズい事言ったかなぁ)

滝井の反応が今一だったので、僕はバス停に着くまで気の利いた言葉がでなかった。


―次は管理棟前 お降りの方はブザーでお知らせ下さい―


車内のアナウンスが流れて少しホッとした
滝井が降車ブザーをゆっくりと押すと、
紫色の"とまります"の文字が点灯した。

「じゃ、降りるね」
「うん、またね」

僕は内心ホッとしていた。

見ると、滝井の手のひらが胸元近くで小さく揺れていた。
バスに乗ってきた時とは打って変わった彼女の小さな"バイバイ"に
僕はさっきの言葉を思い出した。

(いっけない!ホントに一緒に帰るなら待ち合わせ決めなきゃ!)

そう思ったのは、降車口はすでに閉じた後だった。
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