【CORORS①】虹色の扉
鉄格子の間から空を見上げると、月明かりだけが妖しく光っている。
「ソフィア殿、すまぬ」
聞こえるわけないのに、口から零れていた。
数時間前に彼女と共にしたことがまるで夢物語のようだ。
静まり返った塔の中にいると、一層惨めな想いになる。
武器も剣もないから逃げ出すことも今は不可能。
カツ、カツ、カツ
聞き慣れない足音が一歩一歩近づいてくる。
俺の命も此処まで……か。
ヌグゥ
奇妙な声が響き渡る。
俺は素手だけで身構える。
「……サマ、ニコラス様?」
「シモン?」
「はい、お迎えが遅くなりまして申し訳ありません」
「構わん、それより何故この場所が?」
「詳しいことは後程。さぁ、お早く」
「かたじけない」
先程の奇妙な声は、シモンたちが見張り兵に不意の攻撃をお見舞いしてやったからのようだ。
此処の鍵もその時に奪ったものだと。
ったく、無茶苦茶な連中だよ。
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