【CORORS①】虹色の扉

逃亡。光りを求めて


 「ニコラス様が海の中に投げ出されたと聞いた時は、生きている心地がしませんでした」

 「心配かけたな」

 「しかし、よくご無事で」

 「ソフィア殿が助けてくださったのだ」

 「ソフィアとは?」

 「彼女は、――……」


 この数日の経緯(イキサツ)と彼女への想いを語り始めた。

 偶々この島に流れ着いた俺を助けてくれた彼女。

 断片的な記憶を失っていても懇親的に世話をしてくれていた事。

 メルセデス殿の婚約者と知りながらも彼女への想いが膨らみ、また彼女も自国を捨て、俺と一緒になってもよいと。

 メルセデス殿がこのヨルデス国王であった事をシモンに伝え、改めて大変な事をしてしまったと今更ながらに思う。


 「それで、恩人であるソフィア様はいずこに?」

 「……囚われているはずだ。俺と別の牢に」

 「……」

 「シモン、勝手であるのは承知だ。彼女を、ソフィア殿を助けたい」

 「お気持ちは察しますが、次捕まれば命の保証はございませんよ」

 「大丈夫だ。俺は不死身だ」


 不思議と死の恐怖などはない。

 それよりも、彼女を助けたいという想いが強くある。


 「かしこまりました。仰せのままに致しましょう」

 シモンは、フッと笑みをし、肩を下ろして言った。


 「すまぬ。ところで、ルイスとトニは?」

 「出口の確保と足止めをしている事でしょう?」


 シモンは、軽くウインクをしながらサラッと答えた。

 こんな事態でも楽しんでいるとは、さすがだな。


                           - 16 -


< 101 / 191 >

この作品をシェア

pagetop