【CORORS①】虹色の扉
天が、まるで俺たちの見方をしてくれているかのように、月光りがこの天井裏にまで差し掛かる。
おかげで、狭くとも迷わずソフィア殿のいると思われる部屋の上までたどり着くことが出来た。
下を見下ろすと、悲しげに天窓を見つめているソフィア殿の姿が瞳に留まる。
「お婆様、どうか見守りください」
ソフィア……
見張り兵の足音が聞こえ、俺は息の根を潜める。
首にかけてある時計の針に目を向ける。
『ニコラス様、ルイスの時間稼ぎにも限界があります。夜中の2時がタイムリミットでございます』
『わかった。2時だな』
『私は、ここでお待ちしております。』
あと1時間のうちにこの館から出られなければ、全てが水の泡……か。
よしっ!!
足音が遠ざかったのをしっかり耳で確認にし、ソッと声をかけた。
「ニコラス様? どうしてここに?」
「助けが来てな。さぁ早くこれを身体に巻いて」
「私の事などかまわずお逃げください」
「それは出来ぬ。どんな時でもソナタを離さぬと決めたのだ」
ソフィア殿を置いて逃げたところで俺は幸せに暮らせはしないからな。
俺の意志の堅さをようやく悟ってくれた彼女は、ロープを腰に巻いた。
彼女一人を引き上げる事は、決して容易ではない。
だけど、諦めたりはしない。
30分かかって引き上げられ、彼女は再び俺の胸の中にいる。
「こうして、また貴方様に触れる事が出来るなんて……」
「俺もだ。さぁ、急いで。」
「はい」
さっきよりもスムーズに天井裏をハって行く事が出来た。
月は雲に隠れているのか? 今通路を照らし出してくれるものは、何もないが。
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