【CORORS①】虹色の扉

 シモンのいるところに戻ると、彼は穏やかな表情で迎えてくれた。


 「間に合いましたね」

 「なんとかな」

 「ここは、この館の最上階ですわ? どうなさるのですか?」


 『白き石が光る時、道は開かれます』


 突然聞こえた不思議な声。


 「えっ?」
 「誰だ?」
 「お婆様?」


 俺たちの声が重なった。


 「白き石? ソフィア殿、心当たりはあるか?」


 彼女は黙って横に首を振る。

 「つかぬことを伺いますが、白き石とは貴女が首にかけられている水晶の事では?」

 「これですか?」


 彼女は、ネックレスを首から外した。

 白というより半透明の石。

 確か、先代女王の忘れ形見とか言っていたな。

 水晶は光らないだろう?


 「フロレス.デ.アモル」

 「えっ!?」


 俺の心の内を知ってか知らずか、突然シモンが石に向かって呟いた。


 「ソフィア様、大切なお言葉をお婆様から預かってはいませぬか?」

 「大切な……言葉?」

 シモンは何かを知っているのか? 力強く頷いた。

 彼女は、何かを思い出したかのようだ。


 「….ラスタン…キラ……そうよ、『フロレス.デ.アモル、ボイ.ア.ラスタンキラ』」
 flores de amor, voy a lartanquila


 彼女のこの言葉を待ち焦がれていたかのように、水晶が光りを放ち始めた。

 その強い光に吸い込まれるかのように、一瞬身体が浮いた気がする。

 いや、浮いていたのだ。

 信じられない。

 俺は、今まで怪奇現象や摩訶不思議などは信じてはいなかった。

 しかし、今目の前で起こっていることも事実なわけで。

 塔の略天辺から月明かりの中をゆっくり、一つの場所に向かって舞い降りている。


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