【CORORS①】虹色の扉

 降り立ったのは館の庭に隠れるように咲き誇る白百合。

 先代女王様であるアンジェリーナ様が作られたあの庭。

 そして、

 俺たちがこの場所に
着いたのがまるで合図かのように、目の前のさっきまでいた館が崩れてきた。


 「ルイスとトニがまだ中ではないか!?」


 崩れ落ちてきた館へと駆け戻ると、煤まみれになった二つの熊のような影が近付いてきた。


 「よぉ♪」

 「無事であったか?」

 「ったりめぇよ。不死身なニコラス様にお仕えしてる身ですから」

 「アッシらには、貴殿方が助かった事のほうが何よりの褒美ですぜ」

 「お前たち――」


   グワシッ

 俺よりも更に大きな二つの身体を抱き寄せた。


 「あの、……メルセデス様は?」


 ソフィア殿が不安気に二人を見上げる。

 ルイスとトニは黙ったまま見つめ、そして、彼女に告げた。


 「彼は、館から出ようとはしませんでした」

 「アッシら、手を引いたんですよ? けど、何かを叫んでまして」

 「この国は不滅なりってね。これは彼が最後まで離さなかったものです」


 ルイスは小さな写真たてを彼女に手渡した。

 そこに写っていたのは、幸せそうなソフィア殿とメルセデス殿。


 「貴方は……彼から心底愛されていたのですね?」
 「そんな……」

 「すまぬ事をしたな」


 彼女は、この場に泣き崩れた。

 ずっと、彼は営利の為だけにソフィア殿を捕まえていたと思っていた。

 ちゃんと愛を育んでいたんだな?

 彼女を連れて帰る資格なんて……ねぇな。

 俺たちは暫くの間何も語らず、ただ白百合を見つめていた。


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