【CORORS①】虹色の扉
「可っ愛い~、真っ黒ちゃんよ」
「嫌だ。不吉」
これの何処が可愛いのよ!?
全身真っ黒で、目は蒼白く光っていて、小さいくせに上から目線のような──
「どうして?
こんなにも可愛いじゃない」
彼女は、今、目にしたばかりの黒猫を抱き上げた。
「知らないの?
黒猫は不幸を呼ぶんだよ!?」
「そんなの迷信でしょ?
可哀想にね、キミは好きで黒色に産まれたわけじゃないのにね?」
「ニャ~ゴ」
一瞬だけ陽菜に向かって甘ったるい声を放ち、私の頭の上に飛び乗ってきた。
お願い、離れて。
髪の毛が、爪でグチャグチャにされちゃう。
『ソナタハ、クロタイシサマノ、キサキニナルノダ』
頭の中に不気味な声が響く。
誰?
辺りを見回すが、目の前にいるのは陽菜とやっと頭の上から降りてくれた黒猫だけ。
まさか……ね?
「さ、買い物も済んだんだから行くよ!」
「千郷~、待ってよ~」
待たない。
こんな気持ち悪い事が起こっているこの場から、1秒でも早く立ち去りたいの。
水に浸かれば、今より気分は落ち着くのではないか?
そう思わなきゃ、耐えられないよ。