【CORORS①】虹色の扉
やっぱり私は──
「君が舞の代わりを務めるんだって」
「は、はい。
不慣れですが頑張ります」
「ヨロシク」
爽やかにニカッと笑うこの人こそ、相手役を演じる桜小路。
世の女性たちは、このスマイルに酔いしれるのだろう。
しかし、同じフェロモンを出す私には、不気味さを感じる。
「ツバサちゃん、念入りな打ち合わせをしたいんだ。
この後時間取れるかな?」
「はい」
「それじゃ、この近くのスカイホテルで食事でもしながら打ち合わせよう」
やっぱり一流ともなると食事どころも違うのね。
私も桜小路という人物を知るのに良い機会ね。
打合せというより、ディナーショーでも開かれるような雰囲気。
眠気を誘うような、クラシックがゆったりとBGMに流れている。
それに合わせ運ばれてくる料理たち。
普段お茶漬けをサラサラ食べている私には、落ち着かない。
「いつもこういった処で食事をなさるのですか?」
「今日は特別。
今、世間に注目されているツバサちゃんにお近づきになれたお祝い」
今、寒気に襲われた気がする。
「そ、それはご丁寧に……
ありがとうございます」
何故だ?
まるで蛇に睨まれたように、視線を捕らえられてしまった。
コイツの瞳に吸い寄せられそう。
こ、これって、かなりマズイ展開になるのでは!?