【CORORS①】虹色の扉
翌朝早く、まだ他のお客様が見えていない時間から撮影は始まった。
梨乃は、シルビアになりきって大張り切り。
NGも少なく順調に事が運ばれている。
そして、問題のシーンがやってきた。
梨乃には未だ言っていない。
「あ、あのさ」
「私は暫くオフよね。
邪魔にならないように見ているわね」
「待って」
「何よ」
正直に言ったら帰っちゃうよな。
……でも。
「梨乃に代役をお願いしたいの」
「何言っているのよ、翼のような演技力はないのよ」
「ただ座っていてくれてればいい」
断られない事を、唯々祈るばかり。
心臓が破裂しそうなほどバクバクしている。
「それだけでいいの?」
コクリと黙ったまま頷いた。