【CORORS①】虹色の扉

 翌朝早く、まだ他のお客様が見えていない時間から撮影は始まった。

 梨乃は、シルビアになりきって大張り切り。

 NGも少なく順調に事が運ばれている。

 そして、問題のシーンがやってきた。

 梨乃には未だ言っていない。


「あ、あのさ」

「私は暫くオフよね。
 邪魔にならないように見ているわね」

「待って」

「何よ」

 正直に言ったら帰っちゃうよな。

 ……でも。


「梨乃に代役をお願いしたいの」

「何言っているのよ、翼のような演技力はないのよ」

「ただ座っていてくれてればいい」

 断られない事を、唯々祈るばかり。

 心臓が破裂しそうなほどバクバクしている。


「それだけでいいの?」

 コクリと黙ったまま頷いた。



< 160 / 191 >

この作品をシェア

pagetop