【CORORS①】虹色の扉

「此処で?」

「そう、此処で」

 大浴場の赤い暖簾の前に来て、初めて打ち明ける決心した。


「そういうことね」

「……ごめん」

「いいわ。
 その代わり条件があるの──」

 む、ムリ、無理!!

 彼女の出してきた条件は、私もそのシーンに同行する事。

 それが出来ないから、最後の頼みの綱としてお願いしていたのに。

 な、何故!?

 
「だって、台詞は私無理よ、声は違いすぎるもの」

 梨乃は、私より肝が座った女優だよ。

 結局、二人揃って女湯の扉を潜った。

 
「か、勘違いしないでよね。
 あなたのものになるって決めたわけじゃないから」

「わ、わかってるよ」

 彼女であり、競演者であり、最大のライバル。

 だけど、心の準備とかもしていないわけで。

 
「絶対見ないでよ!!」

「見ません!!」

 でも、ちょっと勿体ないかも。

 バレないようにコッソリ……。

 や、止めておこう。



< 161 / 191 >

この作品をシェア

pagetop