【CORORS①】虹色の扉
「シーン137、よーいスタート」
ポチャン
白く濁った湯の中に、小麦色に焼けた肩が浮かぶ。
もちろん梨乃が湯船に浸かっている。
私は、少し離れた大きな湯の中にある岩影に身を潜める。
そのあと直ぐにカメラマンが入ってきた。
後ろからのアングルで、顔を見られる事はない。
が、私はこの後とんでもない映像を目にする──。
「悩みを一人で抱えるなんて……俺がいるだろ?」
そんなクサイ台詞を吐き、タオルを腰に巻いた桜小路が入ってきた。
何故!?
まさか、此処って混浴!?
「雪菜、寂しい想いさせてごめんな」
雪菜とは、私が演じている役名。
しかし、今は梨乃が代役をしている。
私の台本には、こんなシーンも台詞も書いていない。
は、謀られた!?
桜小路は、唯座っているだけの梨乃をいいことに、ベタベタと抱きついているのが、遠目でも分かる。
もう、限界!!
正体なんてバレたって構わない。
俺は岩影から生身を乗りだし、二人の間に入って割った。
もちろん、撮影は一時中断。
そんな事より、
「汚い手で彼女に触るの辞めてくんない?」
「ツ、ツバサちゃん!?
えっ、じゃ彼女は?」
「俺の彼女」
「君たちは、……レ、レズだったのか!?」
アホか。