【CORORS①】虹色の扉
後日、俺と梨乃は揃って木崎さんに呼ばれた。
やっぱり、あの時全てバレちゃったのかな?
「二人揃って主演だよ」
それは、全く想定していなかった言葉だった。
「ツバサ、あなた宝塚に行ったらどう?」
「へっ!?」
「ほら、この間のVTR。桜小路よりカッコイイしね」
そう言うなり、木崎さんの指は再生ボタンを押す。
そこに映し出されたのは、バックアングルだけど、俺たちが密かに育んだ──。
か、カメラ……回ってた? き、気付かなかった。
「これ、いいよ。放送的にも問題ないからね」
後ろ姿だから誰かは分からないが、俺たちは赤面してしまった。
「「だ、駄目!!」」
俺だけならともかく、全国版で梨乃を……。
「それに、私……学校……」
そうだよ。梨乃を退学になんてさせられない。
「それじゃ、二人で桜小路を説得出来る?」
「説得?」
「そう。彼ね俳優辞めるんですって。精神的にショックな事があったって言っていたわね」
それは、俺の責任だけど。
「断ります」
「なら、決まりね」
おぞましくも、ウインクをして梨乃までも引き込んでいる。
この事務所の中から主演が、しかも二人出たことが嬉しいらしく、いつにないお祭り騒ぎ。
……はぁ。
未々、私たちは世間様を騙して行くようです。
多分。
『Fake☆鏡よカガミ』
一先ず終わり。
2009.12月中旬
花穏