【CORORS①】虹色の扉

 今日初めて会うのに、この距離がやすらぐ。

 それは、樋口さんの持っている性質なのだろうか?

 それとも彼女から、ほんのり漂う金木犀の香りの性だろうか?

 初夏の香りが僕達の回りを包み込む。

 僕はこの時、見えない糸を強く感じてた。


 「太田さん」

 「塘之でいいよ」


 無意識のまま、口がそう開いていた。

 図々しいかな?

 なんて思っていたら……


 「……塘之さん……ですね。それでは、私も下の名前で呼んで頂けると嬉しいです」

 「薫さんだね」

 「はい♪」


 名前って不思議なんだな。

 名字で呼ばれるより親近感が湧く。


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