【CORORS①】虹色の扉
「ところで、貴女の服ってこれだけ?」
彼女は、暖炉の傍に干してあるワンピースを指して言った。
「……はい」
日帰りのつもりだったから、何も持ってきていなかったんだ。
「昔、私が着ていたので悪いけど、後で持ってくるわね?」
「ありがとうございます」
「ごめんなさいね」
「えっ!?」
「服。濡れたまま身に付けていると体温奪われちゃうのよ。目が覚めるまでは、あまり身体を動かさない方がいいって言うからね。着替えはやめたの」
この言葉で、自分の姿を再認識し急に恥ずかしさが増してきた。
「じゃ、冷めないうちにシチュー食べてね♪」
「はい。」
この小さな部屋に一人取り残された私は、とりあえず毛布を身体に包み、用意してくれたシチューを口にする。
「美味しい」
身体が温まったら再び眠気に襲われた。
チチチチ……
ピピ ピピピピ……
鳥達のさえずる声に目を覚ますが、誰もいない。
チロ チロ …… パチ バチ ……
部屋の暖炉は弱々しげに燃えている。
昨夜、千暁さんが来てくれたのか? 枕元にロングTシャツが1枚置かれていた。
その上に置手紙
“李樹と仲良くね♪”
たった一言だけ
用意してくれた服を羽織り、お日様に誘われる様に外にでる。