【CORORS①】虹色の扉
午前中目一杯、ひたすら潜る練習。
彼の手、無しでもかなり長い時間潜れるようになった。
お昼休憩を挟んで、再びプールに向かった。
「よし、今度は出来るだけ底に付けられるようにな」
「底に?」
「そうだ。深く潜る事はダイブの基本だろ?こんなプールじゃ景色も何もねぇからつまらねぇけど、海ん中は下へ行く程世界が拡がるからな」
「うん」
海の世界……
写真では見たことがある
真っ青な中に色とりどりの魚や珊瑚礁
地上では絶対に見られない
海の中の魔法の国
私も……見てみたいな
顔が沈みやすいように、大きな力で手を引いてくれる。
だから、私は安心して身体を預ける事が出来た。
50cm……100cm……150cm……
耳が……痛い
ブハァ
「頑張ったな。少しずつで大丈夫だ」
「うん」
「耳、痛くなったら鼻摘むんだぞ」
「うん」
「続けられるか?」
「うん」
再び彼の手に引かれプールの中へ。
ブクン
水の中の彼の姿は、すごく真剣。
高校生とは思えない鋭い表情に変わる。
今朝まで面倒くさそうにしていた人物とは、まるで別人。
ずるいよ
――このギャップ。
握られている手の温度が上昇する。