【CORORS①】虹色の扉
 
 プールから上がり空を見上げると、もう月が昇り始めていた。


 一応、潜水のOKをもらい、スノーケルを浸けて水面移動までなんとか辿りつけられた。


 水の怖さは今日一日で消えたのに、心臓が飛び出しそうなば程の爆音が身体の中に響き渡る。


 「疲れたか?」

 「ううん、平気」


 そんな優しい言葉かけないでよ?

 調子狂うじゃない。


 リキは、それ以来何も口にしなくなった。

 けど

 何かが……違う


 半歩前を歩く早さも、口数が少ないのも今朝までと変わらないのに。


 それに気が付くのが遅かったのは、感覚が麻痺していたんだと思う。

 
 水の中でずっと引かれていた手が今も尚、繋がれたままでいる。

 砂浜に映し出された長い影によって、リキとの距離が今朝とは違う事を知った。



 - 次の日


 朝から器材をつけ、基本操作をおそわった。

 もちろん、器材を買う予算なんてないから、千暁さんが前に使っていた物をお借りして。


 テレビで見ているとすごく簡単そうなのに……


 間違った操作をすると命を落としかねないらしい、常に真剣勝負


 水の中にいる時は無になれる

 
 休憩時間の度に見せられるあどけなさの顔のリキ。


 勘弁して欲しいわ

 気づき始めた自分の心にブレーキをかけている。

 だって、だって

 高校生よ? 子供よ?

 それに……




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