【CORORS①】虹色の扉
「マストをたため!! グズグズするな!!」
「アイッサー」
掛け声と共に白い帆があっという間に降ろされていく。
「ニコラス様、お部屋へ」
「何かあるのか?」
「嵐です」
嵐?
真上の空は、雲一つない晴れ渡った空。
たしかに前方に小さな雲の固まりが見えるが、嵐どころか、雨が降るようにも思えない。
俺は、水平たちが用心深さの為だけに言っているものと思っていた。
―― 数分後
水平たちは、バタバタと甲板を走り回り、俺の真横を行ったりとしている。
さすがに、この緊迫した様子にただならぬ物を感じた俺は、水平たちの言うように部屋へ戻る事に決めた。
が、遅かった。
地下室へ向かう扉を開けかけた。
ゴォ~~
なんとも不気味な音が耳に響き、強い風が吹きつけられバランスが保てなくなった。
水平たちは、船を維持させようと必死に舵を取ったりしている為、俺の事には気が付かない。
地下から梯子の途中にシモンの姿だけが今、俺の唯一の道標だった。
「ニコラス様、早く中へ。私もこれ以上そちらへ行く事が出来ません」
「あぁ。わかっいるさ」
1秒でも早くシモンの所へ行きたいのは山々なのだが――
「シモン、身体が動かないのだ。俺は大丈夫。早く扉を閉めるんだ」
「しかし―――」
「俺を誰だと思っておる?」
「………」
「案ずるな」
「ニコラス様、どうかご無事で」
彼のこの言葉が俺の記憶の最後となった。
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