【CORORS①】虹色の扉
メルセデス――
初めて耳にした新たな名前。
何処かで聞いたことのあるような――
それでいて、とっても大事な名前だった気がする。
――ダメだ
考えようとすると頭痛が走る。
キィ―
部屋の中央の扉が静かに開かれる。
俺より10歳くらい歳上なのか? 貫禄のある人がソフィアと一緒に入ってきた。
「お目覚めになられたようで何より。私はメルセデスと申す。以後お見知りを」
「メルセデス殿、すまぬ。今私は――」
「聞いておる。今はゆっくり休むがいい」
「かたじけない」
「メルセデス様は婚約者(フィアンセ)ですの」
ソフィアは、淡々とした口調で語った。
「式の日取りは決まっておられるのか?」
「いや、私たちはいずれ生涯を共にする事を約束したまでの事。そのような事は、追々考えていくつもりだ」
答えたのはメルセデス殿だった。
彼の言葉に何故か安心をした自分がいる。
「ソフィア殿、幸せなんだな」
彼女は、返事をしない代わりに曖昧な笑みを一つ浮かべた。
幸せではないのか?
こんなにも紳士的な方の花嫁になれるというのに?
胸がチクチク痛む
彼の本意を知るのはもう少し先の事
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