【CORORS①】虹色の扉

 「お花をお持ちしましたわ」


 一度退室した彼女が白い花束を抱えて戻ってきた


 「白百合か――」


 小さな束から部屋いっぱいに広がる甘い香り。


 「えぇ、カサブランカって言うの。白ユリの中でも一番高貴な物として有名よ」

 「百合ってそんなに種類あるのか?」

 「そうよ。ご存知ありませんでした?」

 「あぁ、花は全く」

 「クスッ(笑) そうよね」


 花瓶に生ける後ろ姿そのものが、可憐な花のようだ。

 寂れた客間も花一つで、華やかさが作られるものなのか?


 「それでは、また夕飯の時にお呼びに参りますわね」

 「ソフィア殿」


 咄嗟に、振り返った彼女の細い手首を掴んでしまった。


 「どうされました?」


 どうって……どうしたいんだ俺?


 「……痛いです」

 「すまぬ」


 彼女のか細い声で我に返り、ゆっくり手を離した。

 「お湯を……沸かしに行かなくては」


 彼女は、顔をサクランボのように赤らめ、足早に部屋を出ていった。

 その時、彼女自身がこの部屋の花であると思った。


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