【CORORS①】虹色の扉
食事が終わるとメルセデス殿は用事があると、館を出ていったようだ。
静寂の中、再びソフィア殿と二人きり。
気不味い雰囲気を打ち破ったのは彼女だった。
「貴方を是非お連れしたい場所がございますの」
「俺を?」
「はい」
静かに微笑んだ彼女は、ゆっくりと月夜の庭に続くテラスへと足を運んだ。
テラスから小さな階段を降り、生い茂った草の中に身を隠す。
俺も慌てて追いかけた。
しばらく草むらを歩くと、夕方彼女が持ってきたものと同じ白百合
咲きみだれるその奥に小さな白い家
「ここよ」
ここは、彼女の乳母が昔暮らしていた離れ小屋らしい
今は、誰が住んでいるわけでもないようだが、風通しだけは行っているそうだ。
「何もないですけど、どうぞ。秘密の館ですの」
「秘密を俺に教えてもいいのか?」
「えぇ。貴方は悪い方ではないですもの」
「そんな事どうして分かる。俺は――」
「本当に悪い方でしたら、もっと自信タップリに接するでしょ? でも、貴方は記憶を探そうと必死なんですもの」
「………」
彼女の鋭い観察力に何も言い放つ事ができない。
「どうぞ」
床下に収納してあったカリン酒を彼女から受け取った。
「ウフ(笑) 伊達にメルセデス様と共にしておりませんわ」
「大した娘だな」
カリン酒を一口含ませると、俺も落ち着きが戻ってきた。
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