【CORORS①】虹色の扉
止められぬ想い
―― 数日後の昼
メルセデス殿は国の安泰の為にと彼方此方に足を運んでいる。
ソフィア殿は例の離れ小屋にいるか、海辺で貝殻拾いをされながら彼の帰りを待っているという。
俺もずっと部屋にいるのも退屈だったので、ソフィア殿と海辺に行く事にした。
「ご無理をされてはいけませんわ」
「大丈夫だ、海に飛び込むわけではないからな」
「そうですね」
太陽の光りをいっぱい吸収した白砂浜は、キラキラと輝いている。
しかし、平和すぎるくらい穏やかな時間だな。
クルックルゥ
「まぁ、珍しい。白い鳩だなんて」
彼女の声に振り返ると、見覚えのある一羽の鳩が飛んできた。
「エル?」
クルルゥ
俺の声に返事をしたこの鳩は、“早く”と言わんばかりに足に巻かれた帯状のものを付き出してきた。
「そうだったな」
「それではこの鳩が?」
コクリッ
頷きながら帯を広げる。
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ニコラス様
ご無事であったようで何よりです
明晩、お迎えに参ります
シモン
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明晩か。
そうだな。記憶も僅かに戻ってきているし、長居もしてはおれぬからな。
「エル、わかったと伝えてくれ」
一鳴きして飛び立ったエルを、見えなくなるまで見送った。
「ソフィア殿、例の話……今晩のうちにお考えを」
「……はい」
俺、――やっぱりどうかしているな。
彼女を連れて行くという事は、メルセデス殿から彼女を奪う行為なわけだ。
分かってはいるが、この想いは止められぬ。
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