【CORORS①】虹色の扉

 潮風にあたりすぎるのはよくないと一度館へと戻った。

 彼女の決断は早さには、目を見張るものがあった。


 「失礼致します」


 まだ太陽がギラギラしている昼下り、部屋におかれた花の水の差し替えにとソフィア殿がやって来た。

 白百合は新しい水に嬉しそうにしているのか?

 ゆっくり揺れている。


 「ニコラス様、私をどうか一緒にお連れください」

 「よいのか? 二度と戻れなくはなるのだぞ?」

 「構いませぬ。貴方にお会いする事がなければ、気が付きませんでした。

 私はメルセデス様に大事にして頂いているのではなく、ただ籠の中の鳥である事を」

 「………」

 「明晩、私もあの白砂浜に参ります」


 彼女の強い意志に胸を打たれ、優しくそして、強くソフィアを抱き寄せた。

 俺たちは、自分たちに置かれている立場などを忘れ、何度も何度も唇を重ね合わせた。

 そのまま互いの愛を確かめあった俺たちは、身体も心も一つに。

 いつの間にか眠りについていた。

 だから、彼の、――メルセデス殿の馬の蹄の音を聞き取る事が出来ないでいた。

 まだ眠っている彼女を起こさぬように、衣を纏いかけた。


  ―― バンッ


 勢いよく、何の合図もなく扉が開いた。

 事の重大さを知ったのが遅すぎた。


 「貴様、客人だと思って私が甘い顔をしておれば」


 彼女は、彼の声にハッとしたように毛布の中に顔を埋めるが、時既に遅し。


 「すまぬ。だが、弁解は致さぬ」


 彼の右手の拳が顔の前まできた。


 「止めてください!!」


 ベッドから身を起こしてきた彼女がランジェリー姿のまま、俺たちの間に入ってきた。


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