ラヒュタ
 およそ想像のつかぬ不可解、ただ1つなる言語で表すならば恐怖、そう、恐怖が降ってきて、恐怖が蠢きだす。パドゥーも半狂乱になって叫ぶ。
「バイオきた! バイオ!」
 女の子のゾンビ共は緩慢な動きで、しかして確かな動作でもってパドゥーと親方に迫る。つかみ掛からんとするゾンビをパドゥーはレンチで肉片化させつつ、親方に呼びかける。「ひとまず逃げたほうが――おっと、危ない――良いんじゃないですか!」
 親方は唇を噛んだ。そんな事はわかっている。しかし、逃げようにも360度パノラマでゾンビ、四面バイオ歌の状況ではどうしようもない。親方は焼け火箸でゾンビの頭蓋を串刺しにしてゆく。ゾンビはさまざまな格好をしているが、皆美しい顔立ちをしていた。このゾンビたちはもともと美しく可憐な少女たちだったのだろうか、と親方は、刺した焼け火箸を回転させる事により殊更強い苦痛を与える動作に従事しつつ、想像した。在りし日の面影を残した青白い顔、うつろな眼の、動く人形達は倒しても倒しても減らない。
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