君が悪いのだ
君が悪いのだ
 ベランダの床、昨日は雨が降ったので少し湿っているだろうなと思ったのだけれど、すでに乾いていて、薄灰色のタイルが苛立っていた。
 サンダルがじゃり、と鳴った。このサンダルは1年前くらいに買ったファッション誌に付録として付いてきたものだった。そのサンダルが、またタイルと擦れて、じゃり、と鳴って、洗濯機がごうんと呻いた。
 ごうんごうんごうんごうん、ガタッ、どうんどうん。春先に似つかわしくない、冷たい2月みたいな風が鳴った。タバコの煙を吐き出すと、煙は口から出るや否や風に乗って逃げたので、煙は口から出ているのかどうか、いや、出ているのはわかっている、わかっているが、煙が見えないと、吐き出している気持ちがしないや、と思った。
 洗濯機がごうん、と振動をして止まった。それから5分、タバコを1本消費したが洗濯機は再び動き出さない。洗濯はまだ途中のはずだ。おれは彼の白い横腹を蹴った。
「痛い」
 うめき声のようなものが、洗濯機から漏れる。おれはタバコを消して、もう何度か洗濯機を蹴る。
「いっ、ちょっ、君っ」
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