ピエロの恋遊び
「なに、帰ってた方がよかった?」
ふてくされながら低い声で言う。
それに篠原龍斗は慌てることもなく、自分の席の鞄を掴むと。
「まさか。待っててくれて嬉しかったけど?」
そう言って目を細めて、本当に嬉しそうに優しく笑った。
かあっ。
全身の血が逆流したみたいに、体が熱くなる。
「…あ、そ」
そう言うのが精一杯だった。
だめ、なんかおかしいあたし。
今…ときめいた?
なんにしてもこのまま何かごまかさなくては少しでもときめいてしまったことがバレてしまう。
「早く帰ろーよ、あたしお腹すいた」
「とか言って照れ隠しかよ?可愛いのなお前」
「は」
「顔。赤えぞ?」
そう言って、いつのまにか目の前まできていた篠原龍斗は
あたしの前髪を、指先でさらりとのけた。
「―――っ!」
やばい。
やばい。
心臓、やばい。
「えっ…あ…!」
「こっち見ろよ」
「は、なん、で!?」
「今日何回も目合ったけど…お前全部猛スピードでそらしやがったろ?」
「!!」
バレてたーっ!