ピエロの恋遊び


言い訳だ。

なにか言い訳をせねば…!



「あ、合ってた?あたし分かんなかったかも」


「…すげーキョドってるけど」


「これはアンタが近いからでしょ!?」



バッと前髪に触れる細長い指先から逃れて篠原龍斗を睨み付ける。


篠原龍斗は、にっと口の端をつり上げてあたしを見下ろしていた。


ものすごく意味ありげな笑み。



「…なに?」


「それってさ」


「え?」


「…俺にドキドキしてる…ってこと?」



………。



「……なっ」


「だからキョドってんだよな?」



なんでそうなるーっ!?


つっこもうとした時にはもう遅く。


肩と方頬を掴まれて引き寄せられた瞬間に、柔らかいものが頬に触れていた。


それは言うまでもなく、篠原龍斗の唇で。



「っあああああ!」


「ほら、早く来ねえと置いてくぞー」



はっと我にかえった時には奴は既に教室の外にいた。


あたしはもちろん、奴に罰を下すべく走りだす。


あたしの平和だったはずな日常…大きく崩れはじめている模様です。




 
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