ピエロの恋遊び
「…つうか」
篠原の顔が、視界から、消えて。
耳元に熱い吐息がかかって。
「声、掠れてる。緊張してんの?」
「っ……!」
耳元で温かい息と共に囁かれた。
やけに色っぽく囁くその声にぞくっと鳥肌が立つ。
ぐっと篠原の胸を押しても少しも動かなくて、奴は楽しそうに笑った。
「くく、弱え弱え。そんなんじゃすぐ襲われちまうぞ?」
「……っ」
「なんなら試してみるか」
「は、」
篠原の言っている意味が分からなくて。だけど。
する、と大きな手が体の上で動いて胸の小さな膨らみに触れたとき。
ようやくその意味を理解すると共に全身が一気に緊張で固まった。
「や、やだ…っ」
「俺の名前…分かんだろ。言ってみな」
「っ…」
「早く言わねぇと知らねーよ?」
「りゅ、と!」
無我夢中だった。
絶対に呼んでやらないつもりだったのに、意地を張ってられる状況じゃなくて。
「龍斗!龍斗!っ龍斗!」
ただ、ひたすらその名前を叫んでいた。