ピエロの恋遊び
そして追いかけてくる母を振り切って、ドアを開けて玄関を飛び出せば。
「お、ナイスタイミング。今チャイム押そうとしたんだよ」
目の前に、ヒョウヒョウとした表情でそう話す、憎き篠原龍斗の姿。
まるで昨日のことなんて何とも思ってないような顔に、目眩がしそうなほどイラッとした。
まあ実際なんとも思ってないんだろうけど。そこがまた腹立たしくて。
あたしはフンッとあからさまに顔をそらしてその横を通り過ぎた。
そしてそのまま学校へ向かって歩き出す。
「えっ…あ、オイ!」
慌てたような声が聞こえてくるけど、無視。
スタスタと早足に進めば腕をグイッと掴んで引き止められた。
「…なに」
「なに、じゃねえだろ。なに先に行こうとしてんだよ」
「一緒に行こうなんて約束した覚えないけど」
「は」
「アンタがいつも勝手についてきてるだけでしょ」
冷たく、できるだけ低い声で言う。
そのあたしの言葉に、篠原龍斗はあからさまにイラついたように口元を引きつらせた。