ピエロの恋遊び
「まあ別にいいけど」と言った愛香はどこか楽しそうに見えた。
動揺してたのバレた…?
ま、まあ気にしない方向でいこう。
「そろそろ帰ろうよ」
愛香に言いながら立ち上がると、愛香はうん!と笑った。
あたしたちはいわゆる帰宅部というやつで、バイトもしていない完全ニート。
そんな人多くはいないわけで同じ立場なあたしたちはすぐに仲良くなった。
昨日のテレビの話など、他愛ない話をしながら玄関を抜けて外にでる。
「あっつー」
「まだ6月なのにねー」
「早く秋になれ!」
「超先の話じゃんそれ」
こんな緩い会話が好きだった。
笑顔を絶やさないまま、校舎からどんどん離れていって、正門を出た。
いや、出ようとした。
正門を出ようとしたあたしの腕は、
「雪菜」
低い声と共に誰かの骨張った手に掴まれていた。
いや誰かなんて言わない。
それはちょうど今朝転校生が紹介されたときに聞いたものだった。