白雪姫と毒リンゴ
「でも雪姫って、紅いカード好きだよな。ほら、手札にはいつも紅いカード残すじゃん。」
亮は私の手からトランプの箱を抜き取る。
「確かに。神経衰弱する時もいつも紅いカードばっかり狙うよな。」
「黒は嫌いなんだもん。」
私は亮と秋矢の言葉に口を尖らせた。
「ま、いい。僕はもう行くよ、授業始まるし。」
秋矢は椅子から立ち上がった。
「雪姫は行くか?」
亮が問う。
「んー、遠慮しとく。」
私はふざけた言い方をして、またベッドに寝ころんだ。
「遠慮すんなよ。」
亮は笑いながら、秋矢と保健室を出て行った。
毒リンゴ。
きっとそれは白雪姫の最後の切り札なんだと思う。
トランプでいう、ジョーカーだ。
紅いリンゴは美味しそうに見えて。
誰もが手を伸ばしてしまう。
ババ抜きみたい。
私はトランプの箱から飛び出ていたジョーカーをしまった。