俺と葉月の四十九日
「俺…俺、全然わからなかった…フツウに…生きてる子供だって…」
「だろうね。圭ちゃん素直だし、優しいもん」


そう言って安田は悲しそうに瞳を細め、空を見上げた。


空は少し、夕焼けの朱がかかっていた。


…タクミ、ユーレイだったんだ。


俺は、右手に握り締めた黄色の手紙を見つめた。


『ケロリンにあげる』


タクミが俺にくれた将来の夢を書いた手紙…。

あいつ、将来何になりたかったんだろう。


「タクミくん、言ってたよ」
「何?」
「ケロリンがお兄ちゃんだったら良かったなってさ」

そんな事…あのガキ…。


俺は、安田から顔を背けた。


「…やめろよ」
泣きたくなる。


もっとかまってやりゃ良かったな。


タクミの手紙、夢を綴った手紙…。
俺はそっと、それを広げた。


子供らしい、大きくて曲がった字の短い文章。


(おおきくなったらボクはけいさつかんになる ぜったいなる)


「警察官…」


なりたかったよな?
夢、あったよな?
でかい将来あったよな?

なのに…。


「警察って、圭ちゃんが幼稚園の頃の夢と同じだね」

隣から手紙を覗き込んでいた安田が言った。

「そうか?」
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